イヴェット・ジローとポップスの写真

シャンソン歌手、イヴェット・ジローが8月3日
フランス東部のストラスブルクで逝去されました。享年97。
彼女は1999年に引退した後は彼地で余生を送っていたとのことです。

木之下は、クラシック音楽を中心に音楽シーンの写真を撮っていますが、
20代の頃は『音と映像』をテーマに、ポップスを被写体にして
様々なアプローチを試みていました。
その頃の代表作の一つが、1964年に撮ったイヴェット・ジローの“流れる映像”です。

Yvette Giraud1 by akira kinoshita
<1964年3月 『ミラボー橋』を唄うイヴェット・ジローとピアノ=マルク・エラン~名古屋市公会堂>

この写真について、写真界の大御所・故木村伊兵衛氏は
「どうしたら、このように写せるの?」と尋ねてこられ、
手法をお伝えすると、実際に撮ってみて
「ウマくいかないネ。これは木之下クンの世界だね。」と仰っていました。
この写真は、後に自費出版した『音楽家~音と人との対話』に収録し、
この本は1971年の日本写真協会新人賞を受賞しました。
云ってみれば、イヴェット・ジローは
木之下が世に出るきっかけを与えてくれたアーティストでもあるのです。

Yvette Giraud2 by akira kinoshita
<1964年3月 『愛の讃歌』を唄うイヴェット・ジロー ~名古屋市公会堂>

その後、来日する大物アーティストの公演に足繁く出掛け
音楽家と音が、一枚の写真の中で躍動する映像を追求。
レッド・ツェッペリンやサンタナなど一連の写真は、
『タイム・ライフ世界年鑑』の新人賞にもノミネートされました。

Led Zeppelin by akira kinoshita
<レッド・ツェッペリン 1972年10月 日本武道館>
Santana by akira kinoshita
<サンタナ 1973年7月 日本武道館>

1966年に来日したMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)は
4人4様に撮影テクニックを変えて、音楽家の特性を写そうと撮影。
この写真は清里フォトアートミュージアムが開館記念としてコレクションした
「25人の20代の写真」に収蔵していただきました。

MJQジョン・ルイス by akira kinoshita MJQパーシー・ヒース by akira kinoshita
MJQミルト・ジャクソン by akira kinoshita MJQコニー・ケイ by akira kinoshita
<上左・ジョン・ルイス 上右・パーシー・ヒース 下左・ミルト・ジャクソン 下左・コニー・ケイ>

そして、この写真は、8月9日~24日まで東京都写真美術館で開かれていた
『原点を永遠に。~ヤング・ポートフォリオ20年の軌跡』でも展示されておりました。

若さと情熱でレンズを向けていたであろう60年代~70年代。
素晴らしい音楽を発信する音楽家がいてくれたからこそ残せた写真が
今の木之下を作ってくれています。

イヴェット・ジローさん、どうぞ安らかに。
木之下晃アーカイヴス
スポンサーサイト

【追悼】ロリン・マゼール氏~The late Lorin Maazel~

指揮者のロリン・マゼール氏が7月13日、
アメリカ・バージニア州キャッスルトンの自宅で逝去された。
巨匠は、私にとって、海外の音楽家の中で最も近しくしていただいた方だけに、
突然の訃報に茫然としている。

Lorin Maazel30 by akira kinoshita Lorin Maazel31 by akira kinoshita
<2005年10月22日 東京文化会館>

1973年に2度目の来日公演を撮影してから41年。
来日の都度カメラを向け、
海外でもクリーヴランド、ザルツブルク、パリ、ミラノ、ピッツバーグと撮影を重ね、
撮影回数は最も多い音楽家だ。
巨匠も私の写真を気に入ってくださっており、
写真集にまとめることを話し合っていた最中に届いた訃報でもあった。

Lorin Maazel112 by akira kinoshita Lorin Maazel48 by akira kinoshita
<右・1974年5月28日 東京文化会館   左・1977年4月16日 セヴェランスホール音楽監督室>

数々の思い出を写真と共に振り返り、ここに追悼したい。

1982年、クリーヴランド管弦楽団のラストコンサートを撮影に行くと、
前日撮影に備えて散髪した巨匠は「髪を短く切られた」と少々不満げに照れており、
こう云ってはなんだが、可愛らしかった。

Lorin Maazel68-2 by akira kinoshita Lorin Maazel65-2 by akira kinoshita
<1982年5月6日 クリーブランド、セヴェランスホール>

1984年のザルツブルクでは、
カラヤンがベルリン・フィルと喧嘩し、巨匠が代役で客演。
その頃「カラヤンの後継はマゼール?それとも小澤?」との噂がのぼっていたこともあってか、
凄絶な演奏を展開していた。
しかし、ベルリン・フィルの音楽監督にはアバドが就任し、
巨匠はこのコンサートを最後にベルリン・フィルの客演は断り続けていた。

Lorin Maazel120 by akira kinoshita Lorin Maazel116 by akira kinoshita
<右・1984年6月8日 ザルツブルクにて 左・翌6月9日小澤征爾氏と>

1985年のミラノ・スカラ座で巨匠が音楽監督の代役を務めていた時、
林康子さんが蝶々さんに起用された『蝶々夫人』を取材したのは、日本人として思い出深い。

Lorin Maazel107 by akira kinoshita
<1985年12月20日 ミラノ・スカラ座>

また、ゼッフェルリの名演出『トゥーランドット』では、
当時彼が最も可愛がっていた
ソプラノの故渡辺葉子さんと楽屋で写したツーショットが、
舞台の充実振りを感じさせる1枚で忘れられない。

Lorin Maazel106 by akira kinoshita
<1985年4月3日 ミラノ・スカラ座楽 渡辺葉子さんと>

1988年にスカラ座と来日公演した折には、
巨匠から頼まれてホテルのスイートをスタジオにして、
ポートレイトの撮影をした。
何度も衣装替えをする巨匠をフィルムに収めていくのは面白い体験だった。

Lorin Maazel117 by akira kinoshita Lorin Maazel118 by akira kinoshita Lorin Maazel119 by akira kinoshita

1996年、ピッツバーグ交響楽団とのラストコンサートを取材した折には
自宅に招かれて夫人とのツーショットを撮影した他、
古いアルバムから幼少期の写真を複写。大変珍しく貴重な資料となっている。

Lorin Maazel109 by akira kinoshita Lorin Maazel108 by akira kinoshita
Lorin Maazel 4yearsold Lorin Maazel 9yearsold
<マゼール氏 右4歳 左9歳>

今年7月の札幌PMFには芸術監督として来日の予定で、
公演を楽しみにしていた方も多いと思うが、
私も同じホテルに宿泊して、写真集をまとめる打ち合わせをするはずだった。
それが突然の訃報でキャンセルに。なんとも無念である。

Lorin Maazel113 by akira kinoshita Lorin Maazel114 by akira kinoshita
<右・1990年12月1日 東京芸術劇場   左・2012年10月24日 サントリーホール>

巨匠は長寿の家系で、父親は104歳の大往生だったので、
自身も100歳まで指揮ができると言っており
1日1食主義にしたりと、食事、健康には気を使っていた。
心臓が悪い私に赤ワインがいいと勧めてくれたのは、
日本でポリフェノールという名を聞く、ずっと以前のことだった。
と、思い出は尽きず、未だ茫然としている。

Lorin Maazel115 by akira kinoshita
<シリーズ~石を聞く肖像より>

どうぞ安らかに。

木之下晃

富士河口湖音楽祭2014

今年も富士河口湖音楽祭の季節がやってきました♪
佐渡裕さんが監修するこの音楽祭。
今年も~富士山と共に過ごす音楽週間~をサブタイトルに
河口湖からいろんな音楽が発信されています。

2014音楽祭ポスター


今年も木之下はスライドトークを担当いたします。
木之下が登壇いたしますのは8月21日(木)と22(金)の2回です。

■8月21日(木)17:30~
劇場の原点~世界の野外劇場を愉しむ

[音楽祭総合プログラム]木之下晃公演該当ページ_0801-4

木之下が世界をかけめぐり撮影した劇場をスライドを使って紹介します。
今回は、河口湖ステラシアターの原点となった古代の野外劇場の魅力に迫ります。
劇場の原点を見ることで、人々が常に劇場を大切に思い、
劇場を訪ねることを喜びとしてきたことが見えてくるでしょう。

日時:2014/08/21/ (木) 17:00開場 17:30開演
会場:河口湖ステラシアター
入場無料ですが、事前の申し込みが必要です。
お申込みはコチラのホームページの応募フォームからお願いします。

■8月22日(金)15:00~
ムーミンとシベリウスを愉しむひと時 フォト・トーク & ピアノ

[音楽祭総合プログラム]木之下晃公演該当ページ_0801-6

第一部では、ムーミンの作者、トーヴェ・ヤンソンさんに注目します。
トーヴェさんは今年生誕100年を迎え、各地で様々なムーミン展が開かれていますが、
写真嫌いだったトーヴェさんの写真はあまり残っていません。
とくに晩年の写真は数少なく、写真家・木之下晃が撮影したアトリエでの写真は
大変貴重なものとなっております。
今回は、この珍しい写真を紹介しながら、フィンランドゆかりのピアニスト福士恭子さんと共に
当時のエピソードやそこから感じられるフィンランドの様子をお話ししてまいります。

第二部では、ムーミンをとりまく四季をテーマに
ピアニスト福士恭子さんがシベリウスの作品「春の幻影 op.114-5」 ほかを演奏、
フリーアナウンサー木之下貴子がムーミンのお話しを朗読します。
トーヴェ・ヤンソンとシベリウスが描いたフィンランドの風景が広がることでしょう。

日時:2014/08/22/ (金) 14:30開場 15:00開演
会場:河口湖円形ホール
入場料:一般1500円 高校生以下600円
後援:フィンランド大使館、日本シベリウス協会、日本・フィンランド新音楽協会

今年も河口湖で皆様とお会いできるのを楽しみにしております。

木之下晃アーカイヴス






プロフィール

木之下晃

Author:木之下晃
音楽写真家木之下晃のブログです。
展覧会や出版のお知らせ、
撮影エピソードなどを紹介していきます。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR