【追悼】中村紘子氏

中村紘子さん、やすらかに…
Hiroko Nakamura-2(C)Akira KINOSHITA
【Hiroko Nakamura Ⓒ Akira KINOSHITA Sep,27 2009 Minato Mirai Hall, Yokohama】

木之下晃は、雑誌『ショパン』誌上で、「ピアニストの部屋」という連載を
正味10年近く担当しておりました。
先日お亡くなりになった中村紘子さんのお宅にも取材に伺い、
1988年1月号にご登場いただいておりました。
28年も前の取材にはなりますが、
中村紘子さんの素顔も垣間見られる記事になっておりますので、
故人を追悼して、ここに掲載いたします。

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【ショパン1988年1月号掲載 「ピアニストの部屋」】

Hiroko Nakamura-1(C)Akira KINOSHITA

中村紘子さんのご主人は、ご存じ、芥川賞作家の庄司薫さん。ご結婚は1974年のこと。現在のご夫妻のお住まいは、15年前から庄司さんが独りで使っていたところへ、13年前に紘子さんがピアノとネコをつれて、移ってきた。お部屋の眺望は抜群。東に東京湾、西に富士山が望め、近くにある東京タワーは夜になれば1年中クリスマスツリーみたいに電飾が窓の外を飾っている。
 白い天井、白い壁。あか抜けたリビング・ルームは25畳の広さ。応接セットが2か所にセットされ、その間に置かれたスタインウェイのC型が小さく見える。お部屋のあちこちには美しい生花が彩りを添え、紘子さんの部屋らしい華やかさに包まれている。
 彼女のピアノの部屋は、その隣の16畳の部屋。実は防音のためにその部屋の中に、カプセルみたいにもう一つの部屋が作ってあり、2重扉を閉めるとまったく外に音が出ないように工夫されている。床をはがして、コンクリートを打ち直して作ったそうだ。この防音工事はなんと宇宙工学の進歩の恩恵を受けている。ロケットが飛び立つ時の、あのものすごい爆音がパイロットの耳を聞こえなくしてしまうことから、その方面の研究が進んで、軽くて薄い遮断力のいい防音材が生まれて、おかげで音楽家たちも大助かりとのこと。この部屋にもC型のスタインウェイが入っている。彼女のマンションのエレベーターにはどうしてもフルコンのピアノが入らないので、これでガマンをして、猛烈に勉強されている。
 紘子さんの忙しさはものすごい。年間3か月は海外。日本にいる時も月の半分は演奏旅行。それでも3泊4日以上の旅は絶対にしないように心掛け、家に飛んで帰る。だから地方では、ホテルとホールの裏口しか知らないと笑っている。
旅に出る時には、駅弁が大好きで必ず幕の内弁当を買い込んで乗るとか。でも美味しい駅弁には一度も出会ったことがないそうだ。地方へ行くとデパートの食堂に出掛けて、見本がいっぱい並んでいるのを呆然と眺めるのも好き。
 彼女の料理上手は有名で、絵も文章もものすごく上手。
 気晴らしは車(ベンツ380、中古で買った)に乗ること。スーパーへの買い物も車で行って、野菜の顔を眺めているうちにその日の献立が決まる。
 紘子さんのすてきなステージ衣装は、2人のデザイナーが作っている。君島一郎さんとは20数年のお付き合い。今一人は、松田聖子さんの衣装も手掛ける小峰リリーさん。春に4~5着、秋に3~4着作って、今は、15着が衣装ケースに入っている。
 ここでショパンの読者に耳寄りな話を一つ。もし読者で希望者がいたら、紘子さんが使わなくなった衣装をプレゼントしてくださるそうです。これはステージだけでなく、結婚式の披露宴などに着てもバッチリ決めることができますヨ。編集部まで連絡を入れてください。もちろん数には制限がありますから、念のため。

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なんと、取材中に衣装のプレゼントの申し出があったとは!!
この時、紘子さんから衣装を贈られた方は、きっと今も大切にされていることでしょうね。
謹んでご冥福をお祈りいたします。

木之下晃アーカイヴス






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